【国会レポート】自国のことは自国で決める国であり続けるために【2025年5号】
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻以降、私が20代後半の約3年半を西ドイツで駐在員として過ごし、東西冷戦下で暮らしていた当時の緊張感が、再び戻ってきたと実感しています。
1989年11月9日のベルリンの壁崩壊、そして1991年のソビエト連邦崩壊を経て、西側が勝利し、世界は「貿易依存を互いに深めれば安定と繁栄が続く」と考えられてきました。しかし、その前提は幻想であったことが、明らかになっています。
我が国の豊かさは、極めて脆弱な基盤の上に成り立っています。私は数年前、NHK日曜討論に出演した際にも安全保障について問われ、安全保障の基盤は経済力、すなわち国力であると申し上げましたが、その認識はいまも変わりません。
そして、その国力を取り戻すには、長い期間の歳月が必要になると考えています。丁寧な政権運営と国民の皆さまの理解を深めながら、明確な道筋を示し、着実に実現していきたいと思います。
現実の解像度を上げる中国依存と自立の課題
ビジネスでは、マーケティングが基本であり、市場をどう評価するかから始まります。現在の中国は、例えば2024年の名目国内総生産(GDP)で日本の約4.6倍の規模です。日本から見れば、輸出入に占める中国の比率は約20%に達する一方、中国から見た日本の比率は約5%にとどまります(2023年)。これが現実です。
また、「文化大革命」により中国は大きく混乱し、国家は停滞しました。その反省から、権力の一極集中を防ぐため、国家主席の任期は2期10年までと憲法で定められました。しかし習近平氏は憲法改正で任期制限を撤廃し、2023年に国家主席として3期目に就任し、人事も側近で固めました。私も折に触れて中国を訪れて、ハイテクベンチャーや日系企業の取材をしていますが、3期目以降の中国の空気は、それ以前とは異なっていると感じています。 私たちの国の自立の観点から、農業では種子の確保に加え、化学肥料原料への海外依存を減らす政策誘導が不可欠です。窒素・リン酸・カリの三要素のうち、リン酸肥料の原料となるリン鉱石は国内で産出されず、中国を含む少数国に依存しています。
2023年7月から2024年6月のリン酸肥料の輸入では、中国のシェアは約7割です。堆肥など国内資源の活用を高め、肥料全体の海外依存を低減する取り組みも求められます。
人口が一億人を超える日本で、主食となる穀物のうち国内生産でほぼ賄えるのは米です。その供給力を維持、強化するため、輸入米(米国カルローズ米)よりも廉価な水準を維持し、需要が輸入米や小麦へ流出しないよう、価格と需給の両面から政策を講じる必要があります。
医薬品については、とくに後発医薬品の原薬が概ね6割を中国からの輸入に依存しています。なかでも、手術時に点滴で用いられる注射用抗菌薬は、原材料のほぼ100%を主に中国を含む海外に依存しており、供給が途絶すれば感染症治療や必要な手術の実施が困難になると政府も警告しています。
この背景には、これまでの診療報酬・薬価制度が原材料の調達先まで十分に考慮しないまま薬価抑制が進み、結果として海外依存が深まった側面があると考えます。医療安全保障の観点から、国内生産へのシフトに加え、価値観を共有する国も含めた調達先の多元化が必要です。
電気自動車(EV)や再生可能エネルギー、半導体・防衛産業を支えるレアアース・レアメタルも、対外依存度は依然として高いままです。レアアースは輸入の約6割を中国に頼っており、EV用モーター磁石などに使われる重希土類の製錬は、ほぼ中国一国に集中しています。さらに、リチウムイオン電池の負極材となる天然黒鉛の日本向け輸入の大半や、半導体材料のガリウム・ゲルマニウムなども、生産や精錬工程で中国依存が大きく、中国の輸出管理強化は日本の産業基盤に直結するリスクです。
供給の途絶や、許可制の厳格化による実質的な停滞に備えるには、まず、備蓄で時間を確保する、そして調達の多元化を進める、また、リサイクル拡大や使用量削減、代替材で需要を抑える必要があります。近年、中国はガリウム・ゲルマニウムや黒鉛などで輸出管理を導入し、レアアースや関連技術の許可・規制も強めており、供給の不確実性は高まっています。
世界に必要とされる国であり続ける
最後に、農作物を生産し、製品を製造することを軽視する国は、基盤が脆弱になります。
私の選挙区で航空機部品を製造している企業を訪問した際、多くの受注を抱えていると伺いました。新型コロナウイルス感染症の影響で航空機需要が急減した期間、ボーイングやエアバスを中心とする欧米のサプライチェーンでは、工場の熟練技術者が解雇される事例が相次ぎました。一方、私たちの国は「雇用調整助成金」等を活用して雇用と技能を守り抜きました。その結果、供給力と品質を維持できた日本は、サプライチェーンの中で「外せない存在」として、いっそう重要性が高まっています。
これからも、米の供給力を高めるとともに、ものづくり産業を育成し、世界から必要とされる国としての地位を確かなものにする政策を強く推し進めます。
以上の政策は予算措置を伴い、国民の皆さまにご理解をお願いする場合もあります。しかし、政治への信頼を確保しつつ、自国のことは自国で決められる領域を守り、私たちの国の尊厳(あり方)を維持するために、これらの施策を進めることが求められる国際環境にあることを踏まえ、着実に取り組んでまいります。
