【国会レポート】狂牛病問題の一刻も早い解決は政治に課せられた大きな責任【2001年10号】

今回は「狂牛病問題」を扱いますが、それに関連してまず大島の政治姿勢を述べておきたいと思います。今まで政治家の多くは「私はこう考えています。皆さん、ついてきて下さい」と自分の主張を伝え支持を求めるだけでした。もちろんそれも必要だとは思いますが、複雑な問題が次々に発生してくる現代社会においては、その姿勢だけだと自分の思い込みのみで活動する政治家になってしまう恐れがあります。

思い込みで活動することを防ぐために

大島自身、政治家として最も気をつけているのはこの思い込みです。19年間のサラリーマン生活を経て政治家になったのですが、その経験だけに頼っていたのでは、自営業の方や主婦の考え方、感じ方を本当に理解できるとは言えないでしょう。理解できるという気になった時、すでに思い込みが始まっているのです。

したがって、思い込みを防ぐには、皆さんとの双方向の情報のやりとりが欠かせません。その1つの方法として、大島は、この「政治にパンチ!!」を配付したりタウンミーティングを開いたりした時に(大島宛に意見を書いて送ってもらうための)葉書をお配りしています。今では毎日何通かの葉書が大島の手元に届くようになりました。

そして最近、この葉書で特にご指摘が多くなってきたのが「狂牛病問題」なのです。大島自身、狂牛病には関心はあったものの、率直に言って、皆さんからのご指摘があるまで、この問題に取り組む姿勢に甘さがあったことは否定できません。そこで今後、大島は、当選以来訴えている「雇用対策問題」米国での同時多発テロ事件をきっかけとした「テロ対策問題」に加えて、今回の「狂牛病問題」を3つの重点項目として掲げ、鋭意取り組んでいくことにしました。安全という意味では、「テロ対策問題」と「狂牛病問題」は同じレベルで考えなければならないものだと思います。

さて、千葉県の酪農家で飼育されていた乳牛1頭を動物衛生研究所で検査した結果、狂牛病(牛海綿性脳症)の疑いがあるということが、9月10日、農林水産省より発表されました。さらに、これを英国獣医研究所に検査してもらったところ、9月27日に狂牛病であるとの診断結果が下されました。

と同時に、狂牛病に対するこれまでの日本の役所のズサンな対応が明らかになり、以後、関連業界はもちろんのこと、国民全体を巻き込んでの大騒動となっているのは周知の通りです。

■狂牛病が恐れられるようになった理由と経緯■

以前より、クロイツフェルト・ヤコブ病(以下、ヤコブ病)というヒトの脳がスポンジのようになってしまう病気が知られていました。しかし、1996年3月20日、英国のSEAC(海綿状脳症諮問委員会)は、ヤコブ病と似てはいるものの、1若年層で発生する、2発症して死亡するまでの平均期間が6か月から13か月に延長している、3脳波が異なる、といった点でヤコブ病とは違う症状を示している新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(以下、新型ヤコブ病)の患者が10名いると発表しました。

その上でSEACは、「新型ヤコブ病患者10名のうち9名は過去10年間に牛肉を食べていて、残る1名は91年以降、菜食主義者になっていた。直接的な科学的証拠はないが、他に確度の高い選択肢もなく、最も適当な説明としては、患者の発生は牛の特定の内臓が使用禁止になる前(1989年以前)にそれらを食べたことに関連がある」としました。しかも、これは、それまで狂牛病と人間の病気とは一切関係はないと否定していた英国政府が180度態度を変えたことにほかならず、その結果、世界中に狂牛病の恐怖が広がっていくことになったのでした。

民主党に設けられた対策本部の活動

これに対して、まず民主党では羽田孜元総理が本部長となって狂牛病問題対策本部を設け、大島もそのメンバーに入りました。ここでは、狂牛病についての専門家の意見を聞いたり、農林水産省や厚生労働省、経済産業省の官僚に来てもらって、それぞれの対応の説明を受けたり、また、関係者からヒアリングをしています。

しかし、大島は、党の狂牛病対策本部に居座って関係者から意見を聞くだけでは不十分だと思い、独自に現場に出かけることにしました。従来から、問題の現場に行って、そこで話を聞いて、対象物に実際に触れてみるという行動が政治家にとって最も重要だと考えているからです。

まず埼玉六区内で肉牛を飼っている大島の知人の畜産家に会いに行きました。彼はこう言います。「9月25日に市場で競りが開かれたので、そこに自分の牛を出してみました。そんなに値崩れしないと思っていたのですが、実際はいつも半値にしかなりませんでした。それではまったくの赤字なので、以後、牛を競りに出してはいません。でも、牛には売り時というものがあるんです。それを逃すと、どんどん育っていって、値段が安くなっていくんですね。だから、この問題が長引けば長引くほど我々の被害は大きくなっていきます」

英国では、狂牛病にかかった牛の肉骨粉(食肉処理の過程で残った肉、皮、骨などから製造される飼料原料)を他の牛が食べて狂牛病が広がったとされていますが、この肉骨粉についても聞きました。「ウチは肉牛ですから肉骨粉は今まで1度も使ったことはありません。肉骨粉を使うのは酪農家のほうです。ミルクを取るから、牛乳のカルシウムや脂肪を増やすために肉骨粉を与えることがあるというのは事実ですね」。一般に、肉骨粉を食べさせるのは乳牛のほうで、肉牛ではないということです。

狂牛病の発生は政治家と官僚の責任

また、大島はやはり知人である大手焼き肉チェーンの経営者からも話を聞いたのですが、「日本で狂牛病の牛が見つかって以来、売上げが15%も落ち込んだ」ということでした。

このように何ら落ち度のない人たちがすでに被害を受けているだけではなく、このままだとさらに被害の広がりが予想されます。「狂牛病問題」の早急な解決が必要なのは言うまでもありません。それにしても、英国での長年にわたる先行事例があるにもかかわらず、どうして日本で狂牛病が出てしまったのでしょうか。この点で、やはり政治家の対応が批判され、また官僚の責任義務が問われます。エイズ問題で厚生省の担当課長が何も対策を取らなかったために裁判で有罪になってしまいましたが、この「狂牛病問題」でも今後の展開によっては同様の責任が官僚に問われかねません。

とはいえ、今のところ国として一元化した狂牛病の対策本部を設けているわけではありません。農林水産省や厚生労働省、経済産業省など関係省庁の各部局が狂牛病に個別に対応しているだけなのです。危機管理を共有ができない縦割り行政の弊害が如実に出ているのですが、この現状を改善していくのも政治に課せられた大きな責任です。

安易な安全宣言はかえって問題を生む

大島としては、国が牛肉に関する安全宣言を出さなくてはならないと思いますが、急ぐ余り妥協して安易な安全宣言を出すようなことはいけません。けっして安全宣言が出た後で安全ではなかったということがないようにすべきです。

議員の仕事には立法と共に行政のチェックがあります。今回、大島はまず、行政を厳しくチェックすることを通じて確実な安全宣言が出せるように全力を挙げて取り組んでいきます。