【国会レポート】歴史的な転換期に結びつく「点と点」【2023年6号】

私が親しくさせて頂いている方の勉強会でお話しした際の講演録です。団体の機関紙に掲載されたものを一部加筆しておりますが、ご一読下されば幸いに存じます。

大島です。お久しぶりです。

スタンフォード大学の卒業式でのスティーブ・ジョブズ氏(アップル社の創業者)のスピーチは、StayFoolish、StayHungry(ハングリーであれ。愚か者であれ。)と締め括られていますが、その中で彼は「点と点が結びつく」という話をしています。将来がどうなるかはわからないけれど、今経験している「点」がそこに結びついていくと。

ジョブズ氏は、「大学に入学して半年後、退学することを決めたことで、興味のない授業を受ける必要がなくなり、そして、おもしろそうな授業に潜り込んだなかに、全米でおそらくもっとも優れたカリグラフィー(西洋書道)の講義を受けることができた。そのことが、10年後、アップル社のパーソナルコンピューターを開発するにあたって、豊富な美しいフォント(字体)と文字間を調整する機能などを持たせることにつながった。」と述べています。

私の場合の「点」は、英語ができなかったことです。英語ができなかったので受験語学をドイツ語にしました。「できない」ということでは何語でも同じだったので。そして英語が必須でなかった学部に入学し、学生のときには、ドイツに渡り、企業でのインターンシップに参加することができました。ドイツにはこのときのインターンシップと、就職してからは駐在員として83年から87年まで赴任していました。

大学時代のドイツは、アウトバーンで車を止めて軍事訓練をしていました。1979年ですからまだ戦後が若干残っていて、私の上司は大戦中従軍していて、日本人に対してはドイツが降伏した後も戦ったという印象を持っていました。インターンシップでのテーマはドイツにおける労働組合の経営参加で、労使交渉の現場にも行きました。日本とは違ってドイツでは組合側も半分入って企業統治をするシステムなのです。私の場合、英語ができなくてドイツ語に変えたという「点」が、今につながっているわけです。

1983年の暮れにドイツに赴任しました。まだベルリンの壁があった時代で、当時の経験も生きています。会社の出張で、当時は東ドイツだったライプツィヒの見本市に行った時のことです。ホテルが満杯だったので、民泊させてもらいました。そこの家族と食事をしたときのことです。「大島、いいな。君は世界のどこでも行けるじゃないか。私たちはユーゴスラビアまでしか行けない」と言われたのは、今でも鮮明に覚えています。

こういう感覚が2020年、メルケル首相がコロナで行動制限をするときの演説につながっているのですね。移動の自由がどれだけ大切なのかと。そういう感覚を私たちは持っていないと思います。

1989年11月9日ベルリンの壁が崩壊したときの衝撃は、今でも覚えています。当時は日本に帰っていて、会社で仕事をしていると、「ベルリンの壁が崩壊した」という一報が入りました。ただ83年から87年まで暮らしているときに、「この人たちは一緒になる」と思っていました。やっぱり「ドイツ人意識」みたいなものがあるのですね。現地の言葉ができると、微妙な感覚が伝わってくるのですね。

1989年は天安門事件があった年でもあります。当時の感覚としては、「これで圧倒的な米国のパワーの下に世界は一つになった」と思いました。世界が一つになるから、自由貿易を強化することによって依存関係が進めば世界は平和になるという、きわめて単純な発想。それが2022年の2月(ロシアのウクライナ侵攻)、明らかに間違っていたことがわかったわけです。そういう時代に生きているということですね。

政治家に必要な信頼関係とは

与党には、将来に対する予見性があるように思えます。当選2期で政務官、3期で与党部会長、4期で副大臣、5期になったらひょっとしたら大臣かと。この将来に対する予見可能性が政権与党の強さのように思えるのです。

私たち野党の仕事は選挙を目指しての活動です。選挙というと何か下品に聞こえるかもしれませんが、自分とは異なる意見や価値観も含めてあらゆる民意を直接伺うことです。地元を徹底的に取材することによって、現状認識を整えて、地元を体現することです。

与党は政権運営で忙しいですから。私も与党のときは地元の駅でレポートを配ったことはありません。時の大臣、首相を支えるのが私の仕事だと。こういうところをしっかり整えることによって、国家を担えることになるかなと思います。理想論かもしれませんが、野党の時に日常活動を通して「力」を蓄え、与党になったらその蓄えを消費しながら政策を実現する、そうありたいですね。そして、「駕籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋を作る人」、目立つ人よりも、誰が汗をかいているのかを評価する企業文化ですかね。伸びる会社は、営業や現場の一線で目立たなくても収益に貢献する社員を処遇していますから。

話がそれますが、衆議院の本会議の間、微動だにせずに座っていらっしゃる先生は二人だけでした。一人が中曽根康弘先生、もう一人が鹿野道彦先生でした。中曽根先生に「どういう気持ちで座っていらっしゃるのですか」と聞いたことがあります。ご自身が首相だったら各党の代表質問にどういう答え方をしようかと考えながら座っている、とおっしゃっていました。鹿野道彦先生には、「どういう人が、首相になれるのですか」と聞いたら、「大島、10期は必要だ」と言われた。もう一つは「信頼関係だ」と。与党でも野党でも国会議員同士の信頼関係、役所との信頼関係、新聞記者との信頼関係、そしてさまざまな団体との信頼関係が必要だと。そして、今、特に必要なのは海外の要人との信頼関係だと思います。

ですから私は与野党協議で裏切ったことはありません。役所との関係でもそうです。そのこともあってか、与党のときの役所の方が、私のところに寄ってくれます。信頼関係を積み重ねてようやく役所の本音が聞けるようになる。役所の人もわれわれを見ているわけです。「本当に私心なくやっているのかどうか」と。ですから後輩議員には、役人の本音が聞けて本物だと言っています。 こうした信頼関係は外交においても必要で、とくに今のような時代には不可欠だと思っています。

言論の自由が失われつつある中国

全世界で2900万部発行された『三体』という中国のSF小説は、文化大革命から始まります。主人公の天文学者の女性が大学院生のときに、物理学の先生である父が鉄の三角帽子をかぶらされて「自己批判しろ」と言われ、目の前でなすすべもなく亡くなっていく。これは実際にあった話だと思います。こういう話を知っていないといけないのです。

1966年から1976年の文化大革命では、2000万人が亡くなったと言われています。相当中国は疲弊しました。そのおかげで日本が発展したと考えることもできます。どういうことか。もしも蒋介石が勝っていたら、中華人民共和国ではなくて中華民国だったら、日本を素通りして中国に投資が入っていたと思います。中国が共産主義化したことによって、それを封じ込めるためにも世界の資金が日本に投資されたので、日本が経済成長をしたと私は思っています。中国が共産主義化し、文化大革命で十年間足踏みすることによって日本が発展したと。そのような現状認識は必要かなと思うのです。

私は2010年の12月、与党だったときに一人で北京に行きました。視察で海外に行くときは一人で行くことにしている。複数で行くと感性が鈍るから。

このときも朝から晩まで人に会っていました。中国の日本研究の第一人者とか、向こうの信託銀行で社長を務めている日本人とか、あるいは向こうの法人の董事長(社長)とか。そういう人たちと会っているうちに、選挙のない国の為政者、政治家の方がよっぽど緊張感があるなと思ったのです。

日本では2021年10月31日の総選挙の結果が民意だと思って政治を行っているのですが、選挙当日の一瞬の民意です。中国の為政者は、常にその瞬間の14億人の民意を推し測らなければならない。この緊張感は半端じゃないですよ。一方で、文化大革命の経験から国家主席の任期は2期10年と決めた。それを習近平氏は憲法を改正して3期目に突入している。これは文 化大革命を彷彿とさせるわけです。もう一つは激しい権力闘争です。太子党という革命
のときの有力者の子弟(習近平氏もそうです)グループと共産主義青年団、この二つの激しい権力闘争でバランスを取ってきたわけです。今回の人事では周りを側近で固めてしまった。ですから本当に習近平氏が正しい現状認識を持てるかどうか、不安なわけです。

2023年1月の私のレポートでは、経済は停滞するのではないかと言い切っています。言論の自由がない中国でイノベーションは可能なのか、ということですね。上部構造が政治だとすれば下部構造は経済で、その下の下部構造は科学技術だと私は思っている。ですから、その国の科学技術の創造力を超えて国は発展しないと考えています。

その科学技術の前提となるのが言論の自由です。ですから「政治は経済力によって政策の自由度が決まり、経済はその国が持っている科学技術の創造力を超えては発展しない」と。「言論の自由があって社会全体での自由な発想が生まれ、人々の独創的な発想が喚起され、ビジネスでのイノベーションが起きる」と。だからこそ言論の自由が必要なわけです。

私は2020年、新型感染症で武漢がロックダウンになる8日前に武漢にいました。一泊二日だから助かりました。海外に行くと必ず市場を見に行くのですが、この時も、もう一泊していたら、度々報道されている発生源とされた市場に行っていたと思います。

この視察では、衛星の画像データを基に世界中の穀物の収穫予測をしているベンチャー企業を訪問したのですが、このときは自由な意見交換ができたのです。「米中摩擦があるけれど、ちゃんと米国から画像データを入手できているのか」と聞くと、「いや、最近ちょっとぼやかされています」とか、「日本のデータはどうか」と言うと「公開情報でいいデータをいただいています」とか。機微に触れる質問にも答えてくれました。そういう言論の自由が今はないと思います。アリババとかテンセントとかTikTokを運営しているバイトダンスなどには中国政府が出資しているので、言論の自由が封じられている。

2010年に中国に行ったときも、中国バブルが崩壊すると言われていましたが、私の知り合いで、当時北京に駐在していた役所の専門家は、「中国政府はバブルを崩壊させない」と言い切っていました。「なぜかというと、人民がそのことを信じているからだ」と。バブルが崩壊すると政府に対する信任が失われるから、バブルは崩壊させないというのが、これまでは通説だったのです。

ところが今、習近平氏の下でバブルが崩壊しつつある。これはけっこうまずい。人々の支持を集めるために外に敵を見つけるような行動を取らなければいいな、と思うのです。習近平氏に正しい情報が入っていないのではないか、危惧されるところです。例えばキューバ危機の時には、ケネディとフルシチョフの間でお互いにある程度面識があったから、最悪のケースだけは回避できたわけです。そういう政治家同士の関係がどこまであるのか。政治家同士、立場が違っても正しい現状認識があれば、どうにか折り合える領域があるわけです。ですから習近平氏との会話が重要で、アメリカ、日本あるいは東南アジア、EUを含めていろいろなチャネルで現状認識を整えていかないとまずい、という感じですね。

2023年9月、台湾に行ったときも若い候補者の方と会いました。2024年1月の総統選挙と同時に立法院の選挙もあるのですが、その候補者で37歳の方でした。父親が国会議員という二世の方で、東大にも留学していたから日本語がうまい。この人は複数回当選する、台湾民進党のなかでも有力な議員になるなと直感しました。そういう方と日本の若手の政治家が付き合ったらいいなと思うのです。外交問題を処理できるような人間関係を積み重ねることが、今後の日本の自立には必要かなと思います。

国際秩序が揺らぎ、日本の国力が減衰していく時代に・・・

ロシアのウクライナ侵攻をめぐって、「西側に対する方向転換を、プーチンはいつ決めたのか」という議論があります。いろいろ言われていますが、ひとつは2003年のイラク戦争のときで、国連決議なしにアメリカが中心となって武力行使をしたものの大量破壊兵器はなかったと。この時から、今のトリガー(引き金)は引かれていたということですね。

国連が機能していない、第二次世界大戦前の国際環境に戻ってしまったという現状認識の一方で、わが国は国力とくに経済力が減衰している。経済力によって影響力を行使してきた時代がありましたが、経済力が減衰しているのでそれができなくなっている。これから長期間にわたっての国家運営は大変だと思います。

私は、自分のことは自分で決めたいので、わが国のことはわが国で決めたいなと思っている。ただそれは、下品な言い方ですが何かドヤ顔で決めるということではなく、国力が回復するまでは、巻き込まれないようにしなやかに対応するイメージではないかと。

2022年の2月、予算委員会での私の質問は、日経新聞の記者であった方から議事録送付を頼まれるなど好評でした。そこで言ったことは、どうして経済が減衰したかという話です。私はサラリーマンだったからよくわかるのですが、サラリーマン経営者の心象風景がわからないと経済は語れません。

私は1995年に勤めていた鉄鋼会社を辞めました。38歳で係長でしたが、当時何を考えていたか。ひとつは「もう二度と銀行からは金を借りない」と。バブルがはじけて銀行は連日「金を返せ」と言ってきた。もうひとつは「二度と人は雇わない」と。リストラという、ものすごく大変な仕事を先輩の人事課長はやっていた。人の職場を奪うということがどういうことなのか、骨身にしみて感じました。ですから二度と人は雇わないと。もう一つは新規事業をしないと。いろいろな投資がうまくいきませんでしたから。銀行から金を借りない、人は雇わないということに、2000年代の日本のサラリーマン経営者は徹したわけです。そして労働法制を緩和して、景気変動はすべて派遣労働で対応した。また失敗したら自分の経営責任が問われるから新規事業はやらない。そうやって内部留保を貯めて無借金経営にしたのが2000年代です。

ですから2008年のリーマンショックのときに、日本の経営者は「よかった」、「内部留保がこれだけある」と。消極的な経営が一番自分の身分を守るということです。どうしてこうなったのかを語らないと、日本の経済は語れないのです。

岸田首相も「賃上げ」、と言っていますが、政府は仕組みを作るのが仕事ですから。賃金を上げたり、下請け価格を上げたりすれば、サラリーマン経営者は外国人株主から「何をやっているのか」と言われるので、やりません。「こういう制度が導入されたから給与を上げざるを得ない」と、外国人株主に対するサラリーマン経営者の言い訳を作ることが、政治だと思うのです。私の地元の中小企業は、下請け価格が上がらなければ給料なんて上げられないと言っています。政治が向いている方向がトンチンカンなのですね。

科学技術開発はなぜ必要なのか

もうひとつやらなければならないのが、科学技術です。

予算委員会の質問で、新型感染症下においてのわが国の財政出動は200兆円。200兆赤字国債を出しましたが、国家はまだ破綻していない。ですから10年間でもう200兆円、研究開発投資に使ってもいいのではないかと言ったわけです。

1990年代後半に全世界で産業政策をやめるというトレンドになって、民間に任せようと舵を切った。でも米国を含めて他国のイノベーションはどこで起きているかというと、安全保障分野です。例えばダビンチという手術ロボットがあります。ダビンチは米国国防総省が開発したもので、負傷兵を遠隔で手術するために開発した技術を民生転用した。莫大な費用をかけて開発したものを民間に開放することによってイノベーションが行われているという事実は、確認しておいたほうがいいと思います。

日本における産業政策をどうするか、どこに研究開発投資すべきかということが、ここ数年の私のテーマです。

日本国における準天頂衛星は、与党の時に私が主導して閣議決定しました。これは日本版GPS衛星です。アメリカのGPS衛星は誤差が10メートルですが、日本版のGPS衛星はセンチメーター単位。震災直後だったので安否確認システムを付け加えています。最初は4基だったのですが、4基ではアメリカのGPS衛星の助けを借りないとセンチメーター単位の精度が出ないので、7基に閣議決定を変えました。これを確実に運用するために、1基壊れても大丈夫なようにこれから11基体制に入ってくる。

実は当時、安全保障の観点でも考えていました。中国は「北斗」という中国版GPS衛星で地球を覆っています。イラク戦争の際、アメリカのGPS衛星が電波を一瞬使えないようにした。そのときに中国は、自分の航空機とか艦船の位置を自分で捕捉できないと独立国家ではないと思って整備し始めたのです。こうした衛星はアメリカの「GPS」、ソ連の「グローナス」、EUの「ガリレオ」、そして中国の「北斗」。これが全世界規模で、リージョナル(地域的)だとインドと日本の「みちびき」、この二つだけです。

閣議決定の際に、私は独立国家をイメージしました。自分の国の航空機と艦船が自分の国の電波で位置を測位できないと、独立国家とは言えないと思ったから。国を守るということは、何か勇ましいことを言うことではなくて、こうしたことをひとつずつ積み上げていくことではないか。またこのような衛星を持っていると、米国と相互に協力する関係を深めることができることにもつながります。

そういうふうに考えなければならない時代なので、科学技術が大切だということになるのです。今や科学技術開発は軍事か民生かということではなく、どちらにも転用できるデュアルユースが当り前になっていますから。

デジタル化とは国の仕組みを変えること

私はここ10年以上、ITの研究者に「つまらない」と言い続けています。「なぜ私の一生が1960年代の技術で終わるのか」と。インターネットというのは1960年代の技術ですから。そうしたら2021年、NTTの方が「こういう技術がある」と言ってきた。それがその後閣議決定された光電融合という技術です。

今のウェブ会議では、どうしても遅れが出るのでスムースに討論できない。光電融合の技術では、情報を圧縮することなく光の速度で送れる。今の技術は人間が聞こえない音とか、見えない色はそぎ落として送っているのですが、それをそのまま圧縮しないで送れるのが光電融合の技術で、これができると日本の産業基盤が変わるのです。

例えばウェブの会議でゴーグルかけると(会議場の)画像が瞬時に浮かんで、人の表情もリアルに見ながら議論ができる。サッカー観戦も二次元で見るのではなくて、選手の動きをホログラムでリアルタイムに観戦できる。このようなことができる産業インフラを整備することなのです、国がやるべきことというのは。今は国がやることと民間がやることがよくわかっていない。ベンチャー企業への投資は民間のやることです。国がやることはインフラを作ることです。

例えばマイナンバーカード、みなさん持っていますか?私は5年前に地元の公民館まつりに行ったら、市役所の皆さんがブースを出していたので申し込んだ。先日、市役所から、5年経ったので更新するようにと通知が来た。5年間使ったことはありません。今回、普及のために配ったポイントは2兆円にのぼります。全額国費です。マイナンバーカードの取得は任意です、義務ではありません。それなのに2024年の12月までに、国民があまねくマイナ保険証を持つというのは制度的に不可能です。

あくまでコンピューターは考えるための道具であって、私たちはコンピューター(システム)の道具ではない。ところが今回のマイナンバーカードは、私たちが道具になってしまった。マイナンバーカードを持つことにストレスを感じます。紛失するリスクはあるし、暗証番号の管理は煩雑ですし、更新手続はその都度役所に行かなくてはならない。スマートなのは、カードレスです。何も持たずに医者に行って、顔認証と生体認証で医療を受けられるというのが、デジタル化の本来の姿だと思う。

でもマイナ保険証も、顔認証で何も持たないのもアプリケーションの話、使い勝手の話で、本質ではない。本質は情報を保管するデータセンター(データベース)をどこにどういう形で置くか、なのです。国と地方公共団体の情報を一括して保管しましょうとデジタル庁が入札にかけたら、世界水準のセキュリティーレベルをクリアして受注したのはアマゾン、グーグル、マイクロソフト、オラクル。これみんな外国の企業です。一応日本国内にデータセンターを置けとなっていますが、有事の際には外国政府が当該企業に圧力をかけて、わが国の情報が漏れてしまう恐れが指摘されています。 

2016年に公開された「スノーデン」という映画はよくできています。(アメリカ政府による個人情報監視の実態を暴いた元CIA職員、エドワード・スノーデンの実話に基づく映画。監督はオリバー・ストーン/編集部)このなかに日本の横田基地が出てきますが、日本の情報はそこで筒抜けになっているわけです。それに唯一対抗できるのが量子暗号です。国の研究機関で2018年に量子暗号を研究している先生に、スマホ間で完全秘匿できる量子暗号通信のデモを見せていただきました。こういうことが国のやるべき仕事なのです。

データセンターも、これまでは離れた2ヵ所に同じ情報を保管することで、1つが壊れてもバックアップできるという考え方でしたが、国の情報通信研究機構が次世代のデータセンターを研究していて、1つの情報を乱数を用いて3分割して3ヵ所のデータセンターに持たせ、2ヵ所のデータセンターの情報を突合すれば元の情報に戻るようになります。そして、その通信網を量子暗号で結べば完全なデータセンターができる。このようなデータの持ち方ですと1ヵ所がサイバー攻撃にあって情報が流出しても意味ない情報なので、セキュリティーは強固になります。国産での世界最先端のデータセンター構築の研究開発やその普及に2兆円を投入したら、研究開発力が強化され、国際競争力も強化さると思います。

そして、従来の健康保険証使用はそのままにして、「世界で最も安全なデータセンターを構築したので、ご本人の顔認証と指紋など生体認証のデータを国に預けて頂いたら、今後は保険証やカードを提示することなく、何も持たずに医療が受けられる」ようにして、徐々に顔認証、生体認証に切り替えを図って行きます。その方が、ストレスがないと思います。一方で国が個人情報を持つことに懐疑的な方もいらっしゃいますので、丁寧に国の役割について国会での議論を進め、国民の理解を醸成することも肝要と思うのです。

マイナンバーカード、マイナ保険証普及のために投入した国費は2兆円です。それでもマイナンバーカードは国民の7割、マイナ保険証は6割しか持つに至っていません。政府にとって自信のある政策でしたら、一人2万円のポイントを付与して普及を図るよりも法制化して義務化すべきであると思います。政治に対する国民の不信感が根深いので、法制化など実行力のある政策が実施できていないと思います。政治への信頼を構築することが、今後20年で人口が1億人まで減少してしまう我が国の政策実行力を高める唯一の方策なのです。

ご清聴ありがとうございました。