【国会レポート】企業が求職者から選ばれる時代に【2023年3号】

音声

私が生命保険会社で営業にたずさわっていた当時、日経新聞や日経ビジネスの論調を参考にして、経営者の皆さま向けにダイレクトメールを作成し、送付していました。また、新規顧客を開拓していましたので、毎朝、面談を電話で申し込んでもいました。今でも引き続きお付き合いしている経営者の方もいらっしゃいます。営業を経験すると、情報はこちらから取りに行くもので、待っていても真実はわからないと気づくことができました。

さて、上尾商工会議所と伊奈町商工会、そして大宮ハローワークが協力して、地元企業の求人と求職者とのマッチングイベントが上尾市文化センターで開催され、私が存じ上げている企業もあり、会場を訪れました。55社の中小・小規模企業(以下小規模企業も含めて中小企業)の皆さまが、会議室に数社ずつ、それぞれテーブルで、求職者との面談を行います。求職者との面談が切れ目なく埋まっているのは、住宅設備用部材を製造加工している会社と段ボールを製造している会社の2社でした。

その中で、大手住宅設備メーカー向けに住宅資材の製造加工をしている会社は、私も存じ上げる会社でもあり、取材を申し込み、工場を見学し、経営陣との意見交換もさせて頂きました。同社の経営目標は「優良中小企業を目指す」ことで、多様な働き方に対応できるように、男性社員の育児休業制度の導入や長時間残業を減らすために作業の効率化を図るなど、若手社員が望む制度に社内改革を進めています。採用にあたっては、ホームページに若手社員のインタビューを掲載するなど、求職を希望される方に共感を持って頂けるように工夫しています。

丁寧に人材を育成することが必要

私は、中小企業のものづくりの現場を時間があれば訪問しています。例えば、政府が、デジタル化を政策の中核にするずっと前から、公的な研究所と協働して、製造ラインにセンサーを取り付け、稼働状況の最適化を図っている経営者もいらっしゃいます。生産性が上がるとともに、品質向上についても発注元から表彰を受けたそうです。そして、インドネシアやベトナムで大学の工学部を卒業した方を「高度人材」として雇用して、戦力にしています。

また、知り合いの経営者からは、「私は先代から30代で代表権を引き継いだ。息子が同じ30代になったので代表権を譲った。」と話し掛けられました。私が存じ上げる老舗企業のほとんどが30代で世代交代を行っています。最近、代表権を譲った方から、「息子の企業改革で、残業をなくし、有給休暇を100%取得でき、年収も40代から50代で公務員と同程度を確保し、退職金も一定の金額を提示した。そのことで、いい人材を採用できるようになった」と伺いました。

予想されていたことですが、団塊の世代(1947年から1949年生まれ)は75歳を迎え、補助的な業務からも退きつつあり、少子高齢化により現役世代も大幅に減少しています。しかし、新型感染症の3年間は一瞬ですが労働力に余剰があるように見えたのです。感染症の流行が収まると、これまでにも増して労働力が足りないことが、突然に顕在化しました。

2000年代以降、非正規の働き方を拡大することで、景気変動での人員調整を非正規社員に負わせていましたが、現在は、圧倒的に働き手そのものが減少したことで、このビジネスモデルは既に機能しなくなっています。明らかに、企業が人を選ぶ時代から、企業が選ばれる時代になったのです。そして、今の若者は、賃金もそうですが、有休を取得できるか、男性社員でも育休が取れるか、時間や場所にとらわれない多様で柔軟な働き方やキャリアアップ(人材育成)に力を入れているかなど、企業の姿勢そのものを重視しています。

中小企業での人材育成と経営改革を支援する

中小企業では、限られた人員のなかで、時代に即応した能力を身に付けるために、従業員に公的な職業訓練を受けさせる余裕はありませんし、経営者も資金繰りなど企業を存続させることに専念することが求められますので、経営改革することに手が回らないのが現状と思います。

経営環境は一変し、労働力の需給の逼迫は今後も継続し、あらゆるタイプの方が会社で能力を発揮できる職業能力開発や人事制度の見直しが必要です。生産性を上げるために外国人の「高度人材」の活用やデジタル化による生産性の向上も必須でしょう。

経産省が所管する経営者・管理職向けの「中小企業大学校」や厚労省の職業能力開発のメニューは、幅広く充実しています。しかし、役所に照会しないと情報を入手できません。良い制度を使い切れていません。そこで、中小企業に対して、積極的に情報を提供し、個別企業ごとの相談に対応できる体制の整備を国に対して促しています。

私の事務所では、職業能力向上や国の支援制度についての情報提供をしておりますので、ご連絡下されば幸いです。

03ー3508ー7093 oshima.atsushi@gmail.com