【国会レポート】企業の経営者として社員として女性の能力が生かせる時代へ!【2016年6号】

信用調査会社である東京商工リサーチによれば、(同社が経営者情報を持つ)全国約280万社のうち女性社長の会社は33万2466社(つまり女性社長の比率は約12%)でした。この数字は2015年のもので、2010年と比べると女性社長は1.6倍に増えています。

経営にも女性的な感覚が求められている

いずれにしても女性社長はどんどん増えており、これは今の日本経済に女性経営者を受け入れる素地ができてきたからでしょう。たまたま先日、ある女性経営者と地元の会合で話をしたのですが、何店舗もの小売りチェーンを展開しているこの女性経営者は今から20年前に41歳で会社勤めを辞めて起業しました。「なぜ会社を辞めたのですか」と聞いたら、「会社勤めでは将来がないと思ったから」という答えでした。なるほど、20年前なら現代と比べて女性も会社で出世するのはかなり難しかったでしょう。

この女性経営者はこうも付け加えました。「今のような低成長時代には女性的な感性が必要です」。それで私は、同じく20年前に保険会社の営業マンだったとき、中堅工事会社の社長から「私は男性だけれども、女性的な経営をやっています」といわれたことを思い出しました。先代社長はお母様だったそうで、経営者であるお母様の仕事ぶりを身近で見ていたからこそ、女性的な経営がどういうものかを実感できたのではないでしょうか。では、女性的な経営とは何かといえば、慎重な経営にほかなりません。この会社は女性的な経営によってバブル期もリーマン・ショックも乗り越えることができ、現在、高収益を上げる企業になっています。

振り返れば、高度経済成長期にはどんな経営者でも真面目に働いていれば収益を上げることができました。しかし今のような低成長時代は違います。投資にも慎重な姿勢が必要で、細かい差異にこだわったり、知恵を働かせたりしないと収益に結び付けられません。ですから、そうしたことを「女性的な感性」や「女性的な経営」という言い方で表したとしても違和感はないのではないでしょうか。その意味で、今は女性経営者の活躍するフィールドが広がって、女性経営者が求められていると思うのです。

社員の男女を半々で生産性が向上

もちろん、ビジネスの世界で女性が必要なのは経営者だけでなく、どの仕事においても女性の活躍が欠かせません。私は数年前、公務員制度改革の仕事をしたとき、その参考にするために多くの企業にヒアリングに行きました。その1つが世界的な多国籍企業で、私の以前からの知り合いでもあった同社アジア地域人事担当の役員は、次のような話をしてくれました。

「ウチの会社には全世界で30万人もの社員がいるけれども、男女比は半々になっている。これは偶然ではなく意図的にしていることだ。というのも、男女比を半々にすると生産性が上がるんだよ」と。

これを聞いて私は、社員の男女比を半々にすれば、男性的な視点だけでなく女性的な視点も表に出てきて、男性的な視点だけでは見逃していた論点も浮かび上がってくるのではないかと思いました。それで結局、多角的な論点が精査されて生産性が上がっていくのでしょう。生産性が上がれば、企業経営は安定するし、社内の人間関係も円満になります。

なお、私が社会人になったときには、男性社員の間では女性の上司は敬遠されるムードがありました。しかし、私の事務所にインターンとしてやって来る学生たちを見ると、仕事のうえでは男女の違いはまったくなくなっています。もはや男性だろうが女性だろうが、リーダーシップのある人が上に立つべきという時代になっているのです。

女性が仕事に復帰しやすい環境をつくる

また、地元の中小企業経営者の会合に行ったとき、飲食店を経営している経営者と話す機会がありました。その方が「大島さん、有名大学を出た女性や、大手販売会社の企画をやっていた女性がアルバイトで商品開発や店舗のアイデア出しなどの仕事をしてくれるんですよ」というので、「どうやってリクルートしたんですか」と聞いたところ、「ウチの店で午後の時間を使って簡単な料理教室を開いているのですが、1000円の会費を払って延べで500~600人の女性が参加しています。そのなかでリーダーシップのある女性に、『ウチで働いてみませんか』と勧誘して来てもらいました」との返事でした。

女性の場合、学校を出ていったん就職しても、結婚や出産、子育てなどで会社を辞めて専業主婦になる人も多いのですが、子育てなどが一段落すると再び仕事をしたいという人が少なくありません。そのとき、自分に合った仕事が見つからないので力を持て余している人もいます。しかし前述したように、きっかけがあれば、やり甲斐のある仕事を見つけられることもあるわけです。

ただしそういうケースは偶然ともいえますから、再び仕事をしたい女性たちが仕事を見付けられるような恒常的なネットワークが多くできるなら、女性が仕事で活躍できる機会もそれだけ増えていくでしょう。私も、子育て後の求職に際して職業能力を身に付けられるようにと、国の恒久的な制度として「求職者支援制度」を創設しました。

さて、働ける世代の人口は1995年をピークに減少しています。男性でも女性でも、年を取っても、できるだけ多くの人たちに働いて頂きたい。それが(税収確保の面からも)我が国の底流にある要請です。しかし国が強く政策誘導することは馴染まないと考えますので、今後、人生の段階に応じて多様な働き方を選べるという観点での社会保障制度や雇用制度を提案していきます。